執筆者情報
木村 拓也(きむら たくや)
教育コンテンツプランナー / 元・公立中学校 教諭(学年主任経験あり)
教員時代、属人化していた学校行事の各種マニュアルを整備・テンプレート化し、若手教員の業務負担を30%削減した実績を持つ。ICTを活用した教材開発や学校行事の効率化支援を得意とし、現在は教育現場の「もっとこうなったら良いのに」を形にする仕事に従事。「先生のその気持ち、痛いほど分かります。私も昔、同じ壁にぶつかりましたから。」
先生、修学旅行のしおり担当、お疲れ様です。通常業務だけでも大変な中、本当に頭が下がります。前年度のファイルを前に「何から手をつければ…」と途方に暮れていませんか?
私もそうでした。でも大丈夫です。しおり作りは、正しい手順と便利なツールを知るだけで、先生の負担を最小限に、生徒のワクワクを最大限にできるんです。
ご安心ください。しおり作りは「守りのWord」と「攻めのCanva」を使い分けることで、先生の負担を最小限に、生徒の満足度を最大限に高めることができます。
この記事は単なるテンプレート配布サイトではありません。元・中学校教員である私が、生徒の心に残り、保護者も安心する「伝わるしおり」を、明日から作れる実践的な全手順を解説します。
この記事を読み終えれば、情報の抜け漏れへの不安がなくなり、効率的で質の高いしおり作りの具体的な手順が分かります。まずは肩の力を抜いて、一緒に計画から立てていきましょう。
そのしおり、誰に何を伝えたい?「目的別」設計で失敗を防ぐ
私が若手の頃、生徒を喜ばせたい一心で、いきなりしおりのデザインに凝り始めてしまったことがあります。深夜までパソコンに向かい、見た目だけは良いものができたのですが、提出直前に肝心な「緊急連絡先」の電話番号が古い情報のままであることに気づき、血の気が引きました。
この大きな失敗から学んだのは、しおり作りは「誰に、何を伝えたいか」という目的を最初に整理することが何よりも重要だということです。
当初、私は「しおり=旅程とルールの伝達資料」だと考えていました。しかし、ある年の修学旅行後、生徒たちがボロボロになるまで読み込み、最後のページに寄せ書きまでしているのを見て、考えが180度変わりました。そうです、「しおり=思い出作りの装置」でもあるのです。
この経験から、私はしおりのページを大きく2種類に分けて考えるようになりました。
- 保護者向けページ(守りのページ): 日程、持ち物リスト、ルール、緊急連絡先など、正確性が絶対のページ。保護者の不安を解消し、学校への信頼を担保します。
- 生徒向けページ(攻めのページ): 班行動の計画表、見学地の豆知識、メモ欄、写真ページなど、生徒がワクワクし、書き込みたくなるページ。旅の体験価値を高めます。
いきなり作り始める前に、まずこの2つの目的を意識して構成を考えるだけで、情報の抜け漏れを防ぎ、かつ生徒の心にも響く、バランスの取れたしおりを作ることができます。
時短とクオリティを両立!「Word × Canva」ハイブリッド作成術
「目的の整理は分かった。でも、作る時間がないんだ!」…先生のそんな声が聞こえてきそうです。そこでご提案したいのが、本記事の核となる「Word × Canva ハイブリッド作成術」です。
多くの先生方が悩むのが、「使い慣れたWordは安心だけど、デザインが古くなる」「Canvaはおしゃれだけど、学校で使うには情報整理がしにくい」という点です。この2つのツールは競合するものではなく、それぞれに得意な役割があります。内容の網羅性を固める「守り」の土台としてWordを使い、デザイン性で魅力を加える「攻め」のツールとしてCanvaを活用する。この相補的な関係性を理解することが、時短とクオリティアップの鍵となります。
具体的なワークフローは、驚くほどシンプルです。
この「ハイブリッド作成術」なら、先生が使い慣れたWordで情報の正確性を担保しつつ、デザイン部分だけをCanvaに任せることで、無理なくクオリティの高いしおりが作成できます。
明日から使える!しおり作成5ステップと必須項目チェックリスト
それでは、具体的な作成手順を5つのステップで見ていきましょう。特にステップ2で使う「必須項目チェックリスト」は、先生の「抜け漏れが怖い」という不安を解消するためのお守りになります。
【ステップ1】構成案の作成
まず、全ページの見出しと、そこに何を書くかを書き出します。「保護者向けページ」と「生徒向けページ」を色分けすると、バランスを確認しやすくなります。
【ステップ2】原稿の執筆・収集
チェックリストを使い、Wordに必要な情報をどんどん入力・収集していきます。この段階ではデザインは一切気にせず、内容の正確さだけに集中してください。
【結論】: 持ち物リストと緊急連絡先は、必ず昨年度の担当者と学年主任の先生にダブルチェックしてもらってください。
なぜなら、この2つの項目は、保護者の安心感に直結する最重要項目だからです。持ち物の過不足や連絡先の間違いは、小さなクレームから大きな問題に発展しかねません。この2つの情報の正確性を担保することが、先生自身を守ることにも繋がります。
【ステップ3】デザイン作成
原稿が固まったら、ステップ2で紹介したハイブリッド作成術でデザインを乗せていきます。生徒たちが考えたスローガンをCanvaのロゴ作成機能でおしゃれにデザインして表紙に入れると、生徒たちの当事者意識も高まり、おすすめです。
【ステップ4】校正
全てのページを印刷し、必ず複数の先生で誤字脱字や情報の最終確認を行います。声に出して読んでみると、間違いに気づきやすくなります。
【ステップ5】印刷・製本
完成したデータを印刷・製本します。学校の印刷機を使うか、ネット印刷に発注するかは、品質・コスト・手間を比較して判断しましょう。
印刷方法のメリット・デメリット比較
| 印刷方法 | 品質 | コスト | 手間 |
|---|---|---|---|
| 学校の輪転機で印刷 | △(インクの擦れやズレが出やすい) | ◎(紙代のみ) | ×(印刷、丁合、製本まで全て手作業) |
| ネット印刷に発注 | ◎(プロ仕様で綺麗・丈夫) | 〇(部数によるが、比較的安価) | ◎(PDFデータを入稿するだけ) |
修学旅行のしおり、ここが知りたい!Q&A
最後に、先生方からよくいただく、一歩踏み込んだ質問にお答えします。
Q1. 生徒にデザインを手伝ってもらう時の注意点は?
A1. 素晴らしい試みですね。生徒の主体性を育む良い機会になります。注意点としては、Canvaの共同編集機能を使い、先生のアカウントから「編集可能」なリンクを共有することです。生徒にアカウントを作らせる必要がなく、先生が最終的な管理を行えます。また、「このページのデザインをお願いね」と範囲を明確にし、個人情報が含まれるページは先生が担当するなど、役割分担を明確にしましょう。
Q2. 個人情報の扱いで気をつけることは?
A2. 非常に重要な点です。生徒の班員名簿や部屋割り、緊急連絡網など、個人情報を含むページは、しおりの巻末にまとめ、配布時に「このページは紛失しないよう、特に気をつけてください」と一言添えることをお勧めします。また、学校の個人情報保護方針を必ず再確認してください。
まとめ:自信を持って、楽しい企画の第一歩を!
先生、ここまでお読みいただき、ありがとうございます。修学旅行のしおり作り成功の鍵は、以下の2つです。
- 成功の鍵①:目的別の設計 – 「保護者への安心」と「生徒のワクワク」を意識して構成を考える。
- 成功の鍵②:WordとCanvaの戦略的な使い分け – 「守り」と「攻め」を分担させ、効率的に質を高める。
多忙な中でも、工夫次第で生徒の心に深く残るしおりは作れます。先生のその頑張りは、必ず生徒たちの最高の思い出につながります。自信を持ってください!
この記事が、先生のしおり作りの一助となれば幸いです。
参考文献リスト
- Microsoft Create: https://create.microsoft.com/ja-jp
- Canva: https://www.canva.com/
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